一面 登志暁に聞く

1995年…今から22年前(阪神淡路大震災の年)、私は関西に本社を置くアパレルメーカーの関東地区代理店として、補正下着の拡販をしていました。当時体重が100Kgを超えていた私が、女性の痩身に携わることになろうとは微塵も思っていなかったのですが、証券会社勤務時代の同僚の強い勧めもあり、この業界に入ることになってしまいました。本来は女性が取り組む仕事でしたから、当然のことながらなかなか売上に結びつかず、悪戦苦闘の連日でした。 ところがある協力者との出会いをきっかけに、みるみる売上が増加、全国に代理店を抱える関東一の販社に上り詰めたのです。メーカーの社長の目にも止まり、本社のトレーナーとしても手腕を振るいながら、全国を飛び回るようになって行きました。 全国的にも名の知れたトレーナーとして大活躍するようになり、収入もかなり増えて来た頃、とんでもない事態が起こったのです。なんとメーカーが計画倒産!社長が大金を握って逃げてしまったのです。当時、地方新聞にもニュースとして掲載された、大型倒産事件でした。 さあ、そこからが地獄の始まりです。新しい商品が供給されないのは当たり前として、私が開拓した全国の代理店からは連日連夜クレームの電話が鳴りっぱなし…楽しかった毎日が一転、あれだけ仲の良かった代理店のオーナー達が鬼か悪魔と化して行ったのです。 悩み考えた末に私は腹をくくりました…「全国の代理店が抱える在庫の山を引き取って差し上げよう」と。ある代理店には現金で、また別の代理店には分割払いでと、本当はそんなことまでする必要もないことを、誠意を尽くして実行したのです。当時何人か雇用していたスタッフは全員解雇、毎月何百万という収入で得た蓄えは瞬時に吹き飛び、あっという間に多額の借金を抱える身となってしまいました。所有していた不動産は没収、狭いアパートに引っ越さざるを得なくなったその時は涙すら出ず、自殺という言葉が脳裏をよぎったものです。 しかしながら、事務所に足の踏み場もないほど積み上げられた在庫の山を少しでも現金化しよう、何とか食い繋ごうという気力だけは残っていたようです。人脈の人脈をたどって協力者を探そうと必死でもがいていたその時、ある方と出会うことができたのです。「福岡に面白い人がいるから会ってみたらどう?」…そんなに親しくもなかった友人の一言で、持てるだけの在庫商品を鷲掴みにし、藁をもすがる思いで福岡まで飛んで行ったことが昨日のように思い出されます。 その方こそ、後のISD個性心理学協会初代会長を務めて頂くことになる、住福豊臣先生でした。先生の個人事務所を訪れ、持参した商品の説明を約1時間させて頂きました。住福先生は私が懸命に話をする様子を、ニコリともせずただ黙って聞いているだけでした。私の話にこれほど無反応な人はこれまでにお目にかかったことがなく、福岡まで旅費を使って来たことに後悔しながらとにかく説明を終えました。 「先生、いかがでしょう?」 「一面さんの話は確かに面白い!…ところで一面さん、あなたの今の話の中で、“すごい”っていう言葉を何回言ったか覚えてますか?」 「はあっ?」 …この瞬間が、今私たちが広く伝えている「ISD個性心理学」誕生の原点なのです。 「“すごい”という言葉を連発する人にはこんな特徴があってね…腕を組んで話す一面さんの態度や、あっちこっちに飛ぶシナリオが、一面さんという人格が「ある種」のカテゴリーに属することを伝えてくれます。一面さんの人生は変化を飛び越えたところに存在しており、それを苦にもしません。今の生き方が一面さんの人生そのものなんですよ。ちなみに一面さんの誕生日は?」 …自分の人生は今のままで一面らしくていいんだ…平坦ではなく、むしろ波乱を好む人生こそ一面の人生そのものなんだ…辛くて辛くて仕方なかった毎日が、目の前がパッと明るくなるように光り輝くものに激変した瞬間でした。 商品の在庫を少しでも現金化できればいいと思ってやって来た私が、今度は先生の話に夢中になって引き込まれて行きました。重かった気持ちが本当に軽くなり、意気揚々と商品在庫の山となった東京の事務所に戻って来たことが、今でも忘れられません。 私のような辛い思いをしている人間が世の中には間違いなくたくさんいる…そんな人達に、今私が感じたようなホッとした瞬間を感じてもらえるようなことができるんじゃないか、毎日を苦しい思いで過ごしている人達を助けてあげることができるんじゃないか、それが私に与えられた使命なのではないか…私は住福先生のもとで、勉強を始めることになります。 ただ私が勉強を開始し始めて感じていたことは、このノウハウの「内容」は素晴らしいけど、「表現」が難しいことでした。 「もっと簡単に、誰にでもわかりやすく伝えることはできないものか。」…試行錯誤の結果「12匹の動物誕生」ということになっていくわけです。嗚呼懐かしい!

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